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  • Vol.04 今日入稿するデータを少しでもよくする。いい仕事は、その連続でしか生まれない。

グラフィックデザインの難しさにハマった20代「実は何となく“デザイン”というものがあるらしいという感じで吸い寄せられていって、気がついたら辞められなくなっていたんです。子供の頃も学校の授業で図工に触れることはあっても、美術やデザインに触れる機会は特別ありませんでしたね」と話すのは、6Dのグラフィックデザイナー/アートディレクター、木住野彰悟さん。高校生の頃でも、他の人より少し絵が上手かったほどで、特にデザイン業界を目指していたのではなかったという。「専門学校を卒業して20歳から働きはじめたのですが、最初に入った廣村デザイン事務所もコマーシャル・フォトのAD募集の求人広告を見つけて軽い気持ちで応募したんです」と笑う。入社した頃はまだ写植の時代だったそうで、アナログでデザインをしていたという木住野さん。「軽い気持ちではじめましたが、デザインをやってみると難しくて、20代はその難しさから抜け出せない感じでした。当時は、個人事務所に入っても終身雇用という感じではなく、7、8年経験したら独立することが多く、私も31歳で独立しました。半年くらいは収入がなくても生活できるよう貯金はしていましたが、独立した当初はものすごく不安でしたよ」

自分ごとになれば、大変でも楽しく働けるデザイン業界は独立する人も多いが、木住野さん自身は「独立反対派」だったそう。「僕は選択肢がなかったから独立しただけですし、独立はそれほど楽じゃないですよね。今までは会社がやってくれていた事務作業も自分でやらないといけないので、無駄な苦労をする必要はないと思っていたのですが、独立してめちゃくちゃ大変だけど、楽しそうに働いている人を見ると、自分の責任で何かをはじめると、その達成感はより大きくなるんだと思いました。どこで働いても仕事は大変ですから、それだったら独立したほうがいいと。独立して泥臭い仕事を頑張ってやっている人って、どこか人間味があって僕は好きですね」と話す木住野さん。「誰かに求められることに喜びを感じるのは、人間の本能だと思います。その中で、自分ごととして仕事と向き合える人は、どんな仕事でも楽しくできますし、仕事はそういう人のところに集まってきますよね。難しい仕事でも乗り越えられれば、経験値も上がり、また仕事が来るという好循環が生まれます。言い換えれば、文句ばかり言っている人は、いつまで経っても上達しないから仕事も来ないわけです」

自分の得意分野の専門性を高めること働き方改革が進む中、会社は短い時間で利益を出す人しか雇わなくなってきていると話す。「労働時間が短くなることはいいことだと思います。でも、労働時間は短くなっても、税金は今まで以上に納めてくださいという政策なので、ほとんどの人の暮らしは豊かにはならないですね。労働時間を削減する流れは、働く人の席数を減らすことでもあるので、誰でもできる仕事はAIやITに置き換えられ、他の人よりも特別な能力がなければ席に座れなくなり、仕事をしたくてもできない人が増えるのではないでしょうか。今できることとしては、自分の得意分野で必要とされ、高い専門性を提供することですね。そのためには、現状に甘んじることなく技術を磨くしかないです」

ディテールを追求すると見えてくるもの以前は、仕事以外は寝るだけだったという木住野さんだが、最近は休むことを意識するようになったそう。「仕事を長く続けるためにはある程度休むことも大事です。うちの事務所もなるべく早く帰れるようにしています。20時くらいに終われば映画を観たり、友達とご飯くらいは食べに行けたりしますから」と話す。「それでも僕自身は仕事が好きです。大学で教えたりもしていますが、色々とやっていく中で、やはり手を動かしてデザインすることが重要だと思うようになりました。ディテールの追求ですね。細かいことに時間を費やすことで、逆に大きな部分の違和感を見つけられます。道筋は極端に変わることはないので、来た仕事を一つひとつ丁寧にやるしかないと思います。今日入稿しなければならないデータを少しでもよくすること。その連続だと思います。いい仕事をしていたら絶対に仕事は来るのですから」

シゴトジウムトークイベント登壇決定!9月11日(Wed)にWeWorkで開催されるトークイベント「シゴトジウム(Vol.04)」は、木住野さんにご登壇いただきます。参加ご希望の方はイベントフォームから申し込みください。

木住野 彰悟

アートディレクター、グラフィックデザイナー。1975年東京都出身。
企業や商品のブランディングをメインに、ロゴやパッケージデザイン、サインデザインなど幅広く手掛ける。2016年にはD&ADデザイン部門審査員、2017年からはグッドデザイン賞の審査員を務める。近年の主な仕事に、KIRIN Home TapのAD、KASHIYAMA the Smart TailorのAD、ロッテZEROパッケージデザイン、小田急線路線図デザイン、登戸駅ドラえもんサインなど主な受賞にD&AD、カンヌ、One Show、DFAA、ADC賞、SDA賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、パッケージデザイン賞 他

東京工芸大学芸術学部准教授

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