- HOME
- SPECIAL INTERVIEW
- Vol.07 副社長の肩書なんて、もはやネタ。これからもずーっと映像の現場で働きたい!
向いていなかったグラフィックデザインの仕事「『うーん、中島君はデザインはやめたほうがいいんじゃないかね』と言われたんです」と笑うのは、東北新社のCMディレクター兼取締役副社長の中島信也さん。武蔵野美術大学でグラフィックデザインを学び、広告業界を目指して就職活動をしていた際、広告代理店の人にそう言われたという。「当時はまだMacもない時代だったので、グラフィックデザインといってもカッターで一文字一文字切り、ピンセットで並べていくような作業でしたから、実は僕自身も好きではなかったんです(笑)。でも、プレゼンは面白いからテレビ業界の方が向いているかもしれない、ということで東北新社を紹介してもらったのがきっかけです」
使いっ走りからスタートした駆け出しの頃「映像制作はまったく知らない世界でしたけど、グラフィックデザインの細かい作業からも解放されましたし、プロダクションマネージャーとして土のスタジオに立って体を動かし、大声を出している方が合っている気がしました」と振り返る。アシスタントのアシスタントのようなポジションだったため、仕事といっても使いっ走りのような仕事が多かったそう。「僕自身はそれなりに楽しくやっていたのですが、ある時、東北新社を紹介してくれた人に『君にプロダクションマネージャーの仕事をして欲しくて紹介したわけじゃないんだよ。ディレクターの仕事をやってくれ』と言われました。ディレクターがいる部署は企画演出部というところなのですが、弟子入りしなければならなかったんです。恐い師匠がいるという噂もあってビビっていたのですが、会社の命令なのでそちらに異動し、鞄持ちからはじめ、演出家の仕事、CMディレクターの仕事を少しずつ覚えていきました」
チーム全員でつくる団体戦の面白さ下積み期間を経て少しずつ現場を任されるようになった中島さんだが、監督として現場を引っ張っている感覚はなかったという。「現場にはたくさんのプロフェッショナルがいるので、実はなんとかなっちゃうんです(笑)。どちらかというと皆さんに引っ張り上げられていたという感じでしたね。でも、映像制作の現場は団体戦なので、旗振り役としてまとめることは面白かったですし、撮影が終わった瞬間、スタッフたちと一緒に喜びを共有できるのはこの仕事の醍醐味だと思います。グラフィックとは予算のスケールも違いますし、広告主をはじめ、戦略プランナーやマーケッターなど、たくさんの人と折り合いをつけながら一つの映像を仕上げるのは、何ともいえない達成感があります」
広告という自慢話を好きになってもらうアイデア「テレビは観られなくなったと言われることもありますが、大袈裟にいえばテレビは“国民の財産”なんです。お年寄りから小さい子供まで公平・公正に安心して観られる情報源です。Web動画は増えている一方で、つまらない映像はスルーされるという過酷な環境になっており、注目を浴びるのは相当な力量が必要になっています。テレビは視聴率10%といっても1,000万人ですから、観ている人の数が全然違うわけです」と中島さん。「CMは基本的には自慢話なので嫌われがちです。だから僕らは嫌われないで自慢できる方法をアイデアとして考えているんです。ガマの油売りのように、喜ばせたり、笑わせたり、観ている人のプラスになるものがないと聞いてもらえません。単に効果・効能を謳うだけの自慢話では、きっとガマの油も売れないでしょう」
大事なのは普通の価値観、引き出し、向き合い方「クリエイターって“人とは違った価値観を持つことが大事”みたいなことを言われることも多いんですが、僕は普通の人の感覚を養い、どれだけ普通の人たちの生活感に近づけるかが大事だと思っています。プロダクションマネージャーだったら、うまい弁当屋を知っているとか(笑)。そうやって引き出しをいっぱい持っているほうが強いと思います。ベンチャー的なデジタルクリエイティブのような会社は、若手がいきなりヒットを飛ばすこともありますが、僕たちの世界は今でも徒弟が続いている業界です。一人前になるには5年、10年の経験は必要ですが、まずは与えられた仕事と向き合い、一人前になることが大切だと思います。これから生まれる若手のスーパースターたちの刺激を受けながら、若いクリエイターから声がかかるオッサンであり続けたいです」
シゴトジウムトークイベント登壇決定!2020年1月23日(木)にWeWork乃木坂で開催されるトークイベント「シゴトジウム(Vol.07)」は、中島さんにご登壇いただきます。参加希望の方はイベントフォームから申し込みください。